• 2024.04.
  • 20

新しいコンテンツを生み出す必要はない。モデルをたくさん知ることから

『痛い失敗体験から学んだ 愛される書籍の成功の秘訣(仮)』、今回は、新人時代の恥ずかしい思い込みから学んだことをお話します。すっかり忘れていたけれど、この学びが、のちの30年間の編集者生活を支えてくれました。

新人時代の恥ずかしい思い込み、それは、「自分が新しい何かを生み出すと思っていた」ということです。文字で書くと、さらに恥ずかしい……。

クリエイティブな仕事をする!と入社したものの

私が出版社に入社したのは、1990年の春。いまでこそバブルが崩壊した年となっていますが、就職はまだまだ超売り手市場。そんな世の中の雰囲気にも関わらず出版社は競争率が高く、30社以上受けた中でたった一社だけ内定をいただいたのが、主婦の友社でした。

そんな「勝ち取った感」があったせいか、入社したときは、すぐにでも編集の仕事ができる!やりたいことを雑誌で表現できる!と思っていました。

ふわふわした気分を打ち砕いてくれたのが、新人研修時代に参加した「中間報告会議」です。研修では、主だった雑誌の編集部に席をもらい、2週間、見習いの仕事をさせてもらったですが、たまたま「中間報告会議」の日程にあたり、出席することになったのです。

「中間報告」というのは、雑誌の企画担当をもらったあとで、その担当企画のテーマをどのように展開するのか、ラフコンテを描いて、プランを報告するという会議でした。会議に参加するにあたって、研修中の私にも企画を与えられました。

まさに、テーマから誌面展開を作り出すクリエイティブな仕事!

嬉しくてドキドキしたのは、一瞬のこと。テーマと、簡単な内容と、ページ数だけを与えられて、いざラフコンテを描こうと思っても、何をどうしていいのか、わかりません。思いついたことを、それ風に描いてみても、ページが埋まりません。

クリエイティブは、ゼロから生み出さなくていい

見かねた指導先輩が教えてくれたことは、「資料室に行って、バックナンバーから同じテーマの記事を探して、読みなさい」ということでした。

雑誌には、繰り返し取り上げるテーマがあります。それは、どうしても外せない情報だから取り上げるのですが、やはり時代の空気に合わせて切り口を変えたり、展開を変えたり、読む人が飽きないように工夫をしながら形にしていきます。それを読めば、

・大事な情報は何か?
・わかりやすい展開はどういうものか?
・いまの空気をどう取り入れるか?

などを読み解くことができるのです。

バックナンバーを、年を遡りながら何冊も読んでいくと、おぼろげながら「型」のようなものが見えてきました。その型をなぞって、その上に、自分が面白いと思う見せ方を考えていく。それなら、アイディアが浮かんできます。

「何かを生み出す」「新しく創り出す」というのは、真っ白な状態では難しい。ベースになるモデル(型)を、まず自分の中に取り入れる。

クリエイティブは、その上で磨いていけばいい、と学んだのでした。

書籍を書くときも同じ。お手本を見つければいい

Amazonのおかげで電子書籍がセルフ出版ができるようになり、「出版の夢」を叶える人がどんどん増えてきました。

30名以上のKindle出版サポートをしてきて言えることは、最初はみんな新人ということです。

テーマや書きたいことは頭に浮かんでも、「どうすれば書籍という形になるのか?」がわからない……。そこでもがき苦しむ人は、たくさんいます。

でも、これって当たり前ですよね? 今までやったことがないことに挑戦しているのです。自分の中に「型」がないのだから、形にならないのは当たり前なんです。

だから、まずお手本を見つける。

私が新人時代にバックナンバーを読むことで「型」を知り、それをなぞって構成をつくることで、ようやく形をつくれるようになったように、お手本をしっかり見ること、なぞってみることから始める。

いままで楽しく読んでいただけだった書籍も、

・どんな流れになっているのか?
・どう展開しているのか?
・わかりやすさの工夫は何か?

などを意識しながら読めば、まったく違う姿が見えてくると思います(その姿が、構成です)。

もちろん、書籍の構成の型(フォーマット、テンプレート)や、文章構成の型について書かれた書籍はたくさんありますから、そういった書籍を読んで、全体像を学んでみるのも良いと思います。

たくさん真似たから、引き出しが自由に開く

思い返すと、雑誌編集部に配属になったあとも、1年間は、定番テーマの担当が続き、ひたすらバックナンバーを漁っていました。やがて、ライバル雑誌のバックナンバーも漁るようになり、まったくジャンルの違う雑誌からヒントを見つけるようになり、趣味で開いた雑誌から構成のヒントを見つけたりもしました。

そうやってたくさんの引き出しができたから、「扉はあの雑誌のあのページの感じで、中面の展開は、あの雑誌の感じでいこう!」と、自由にアイディアを組み合わせて、新しい誌面をつくれるようになったのでした。

いまは、お手本探しから入ることはないけれど、それもたくさんのお手本を真似て真似て、身につけたからだと思います。

まさに「守破離」をやってたんですね。

新人は、まずは真似から。いいものは、たくさん真似しましょう!


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