• 2025.06.
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【著者インタビュー】専門知識を「身近な言葉」で伝える挑戦でベストセラーに~森本繁生さん~

「あなたの編集者」、Kindle出版プロデューサーの藤岡信代です。
2025年3月に出版された書籍の著者インタビューをお届けします。

TOC(制約理論)をベースとした企業改革を手がける、こきょう代表の森本繁生さんが、初の著書『小さく分ければうまくいく』を出版し、わずか1日でAmazonベストセラー1位を獲得されました。専門用語を一切使わずに理論の本質を伝えるという挑戦の背景には、「専門知識をもっと一般的に広めたい」という強い想いがありました。

――今回出版された本について教えてください

森本繁生さん(以下、森本さん):『小さく分ければうまくいく』というタイトルで、サブタイトルに「待ち時間を宝に変える」と書いています。15年間、企業でTOC理論をベースとした改革をやってきた中で、この優れた考え方をもっと一般の方にも伝えたいと思って書きました。一言で言うと、「大きくまとめる」ことの弊害を解き、「小さく分ける」ことの効果を身近な事例で紹介した本です。

――本を書こうと思われたきっかけは?

森本さん:実は、TOCという言葉を伝えれば伝えるほど伝わらないという現実がありました。専門書の『ザ・ゴール』は名著として知られていますが、「読んだ」という人は多くても、実際に応用している人は少ない。読んで分かることと、できることには大きなハードルがあるんです。それを何とか身近なところから変革を起こしていきたいと思ったのがきっかけです。

――森本さんご自身も企業での改革に15年間取り組まれてきたんですね

森本さん:はい。さまざまな企業で業務改善に関わってきましたが、そこで気づいたのは「世の中は大きくまとめたがる」ということなんです。経理の記帳を月末にまとめてやるとか、みなさんも心当たりがあるのではないでしょうか。でも実際に現場で小さく分けてみると、思ってもみなかった良い結果が生まれることが多かったんです。

――「TOC」という専門用語を本文で一切使わなかったそうですね

森本さん:はい。思い切って封印しました。藤岡さんからも「読者が普段使っている言葉を使いましょう」とアドバイスをいただいて、改めてその重要性を実感できました。専門用語を使わずに、身の回りの言葉だけで本質を伝える。これが一番のポイントでした。

――ご自身の倒産体験から本が始まりますが

森本さん:28歳の時に勤めていた会社が倒産したんです。正月以外は朝8時から終電まで働いていたのに、儲からずに倒産。その後転職した会社は5時に終わって、急に時間が余りすぎた。この違いは何なのか、ずっと読み解きたかったんです。倒産した会社では、仕事をまとめてやる、大きくまとめて処理するという考え方が蔓延していました。

――「小さく分ける」ことで、どんな効果が実際にあったのでしょうか?

森本さん:本当に様々な効果がありました。例えば売上が伸びたり、利益が出るようになったり、必要だと思っていたお金が不要になったケースもあります。人の面でも、必要かもしれないと思っていた人員が実はそんなに要らなくて、みんなが早く帰れるようになったということもありました。

――具体的な事例で印象的だったものはありますか?

森本さん:介護施設での朝食の事例ですね。24人の入居者さんを全員まとめて朝食に連れて行くのに3時間かかっていたんです。それを8人ずつ3グループに分けたところ、全体時間が2時間20分に短縮され、温かい食事が提供できるようになった。でも一番驚いたのは、全介助が必要だった4人の方が一部介助まで回復されたことです。小さく分けただけで、人が元気になったんです。

――なぜそんなことが起こるのでしょうか?

森本さん:待ち時間が短くなったからだと思います。3時間も待つのは、高齢の方にとって本当に疲れることなんです。でも疲れなくて温かい食事が食べられるようになったから元気になった。もしかしたら病院に行く回数も減るかもしれないし、高齢化社会を変えるかもしれないと思うんです。

――執筆方法がユニークだったそうですが

森本さん:実は私、本を読めない人なんです(笑)。本を開くとすぐに眠くなるか、一行読んで考え込んで離脱してしまう。それで「書かない執筆術」を編み出しました。最初から書くのではなく、まず話したいことを音声で録音して、AIで文字起こしして、それを編集していく方法です。

――その方法を選んだ理由は?

森本さん:体系的にまとめて書こうとすると、私の場合は最初から進まないだろうなと思ったんです。それよりも、話す方が楽だなと最近感じていたのと、AIの文字起こし精度が素晴らしくなったので、これを活用しない手はないなと。書きたいところから話して、後で構成を考えるほうが私には合っていました。

――話すときのコツはありますか?

森本さん:最初は「本を書く」ということを意識せず、「この事例を絶対に伝えたい」という気持ちを大事にして、熱を込めて話すことですね。それを文字化すると、今度は読み手として客観的に見ることができる。「この言葉わからないな」「繰り返し使いすぎて読みにくいな」ということが見えてくるんです。できたものを修正していく方が、私にはやりやすかったです。

――執筆で大変だったことはありますか?

森本さん:文章を書くこと自体は、意外とこのツールが使える時代だからか、思ったよりハードルは低かったです。よく著者の方が「5年も寝かせて大変だった」という話を聞くので覚悟していたんですが。むしろ大変だったのは、読んだ方にどうお届けするか、読んだ後にどういうつながりを作っていこうかという方でした。これは今も継続中ですね。

――出版によって何か変化はありましたか?

森本さん:出版前は3月に向けて準備していたんですが、近づけば近づくほどやることがどんどん見えてきて、出てからが結構いろいろ起こるなと実感しました。今が一番忙しいというか、出版はスタート地点だったんだなという気持ちです。でも想像していなかったベストセラー1位も取れて、本当にありがたいなという感謝の気持ちでいっぱいです。

――SNSなどの発信と出版の違いを感じられましたか?

森本さん:全然違いますね。SNSは今、AIで生成された、本当かどうかわからない情報が大量に流れる時代です。そんな中で、ちゃんとした情報を求める人が増えていると感じます。書籍は、すごく応援が集まるんです。今回も実感しましたが、これはまた違うメディアだったなと。やはり書籍には重みがあります。

――「大切な人に手渡してほしい」という想いがあるそうですね

森本さん:はい。私がTOCを始めたとき、『ザ・ゴール』の漫画版を家族に手渡したら、仕事を応援してくれるようになったんです。家族の理解って、難しい仕事をしていく上でとても大事ですよね。この本は、家庭の冷蔵庫の話や洗濯の話など、身近な事例を入れているので、共通言語ができる。それで仕事もよくなるし、家庭もよくなる。そこを目指したんです。

――読者からの反応はいかがですか?

森本さん:おかげさまで、すでに仲間からたくさんの応援をいただいています。実はキャンペーン前日にフライングして購入してくださった方がいて、一つのカテゴリーでベストセラー1位がついていてびっくりしました。初出版でAmazonのベストセラーをいただけるなんて、不思議な感覚ですが、本当にありがたいです。

――これから本を書きたい方にアドバイスをお願いします

森本さん:まず、話してみることをお勧めします。素材を出すことから始めてほしい。自分の得意な方法でいいんです。私の場合は話すでしたが、書くのが得意という方もいらっしゃると思います。まとまらなくても書いてみて、後で構成することはできますから。

――編集者との関係も重要だったそうですね

森本さん:はい、良い編集者をつけることです。藤岡さんに「読者が使っている言葉を使いましょう」と常にウォッチしていただけたのが本当に大きかったです。これを書いている間ずっと持っていました。それを常にウォッチしてくれる身近な方をつけていただくと、楽しく進められると思います。出版は今が旬だと思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

――今後の展望をお聞かせください

森本さん:出版はスタート地点だと思っています。この本で扱った心理的なボトルネックへの対処法をもっと展開して、皆さんが日常的に不安や抵抗に対処する方法をお伝えしていきたいです。読んだ方とのつながりを作り、実際に一緒に変革を起こしていく。そんな展開を考えています。

著者プロフィール
森本繁生(もりもと・しげお)
こきょう代表。TOC(制約理論)をベースとした企業改革、組織改革のプロジェクトを手がける。28歳で倒産を経験し、その後15年間にわたりさまざまな企業で業務改善に取り組む。本書が初の著書。

『小さく分ければうまくいく~待ち時間を宝に変える~』
著者:森本繁生
Kindle版・ペーパーバック版 同時発売中
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